翔んで埼玉
*以下は翔んで埼玉の感想ですので、鑑賞した後にご覧ください
原作者である摩夜峰央は、代表作である『パタリロ』シリーズで知られる漫画家です。母親が『パタリロ』の愛読者であったため、私は幼い頃から摩夜峰央に親しんできました。残念ながら原作『翔んで埼玉』を未読であるため、原作との比較は省き、単純に映画版についての感想のみを記します
これは関東において東京が君臨した世界で、圧政に苦しむ下層民である埼玉が立ちあがる反逆の物語です。一言でいえば、馬鹿げた話です。ですが「火のない所に煙は立たぬ」とはよく言ったもので、ある程度は現実に即しています。地域格差のステレオタイプを下敷きに、それを誇張し、自虐を交えることで嫌味のない笑いへと昇華している。エッジの効いた世界の切り取り方は、さすがは摩夜峰央といったところでしょうか。馬鹿げた枝葉とは対照的に、物語の本筋は虐げられてきた者たちによる圧制者への反逆という王道であり、いたって真面目な話作りです。設定に矛盾は見受けられず、過度にご都合主義な展開が続くなどといった文句の付け所もありません
この映画を評価するにあたっては、真摯に馬鹿をやっているという点を高く評価したい。GACKTをはじめとした豪華絢爛なキャスティングに、チープではない画面作り等、随所から制作陣の熱量が伝わってきます
正直なところ、どういう選考・過程を経て『翔んで埼玉』を実写映画化しようという結論になったのか、何に着目し、どこに勝算を見出したのか、私にはわかりかねます。しかし、これが実際に興行として成功を収めているのですから、制作陣の物を見定める眼は確かであったことが窺えますね
エンターテイメントというものは、そもそも教訓や気づきを求めて観るものではない。私は、後に尾を引かない一過性の娯楽作品として、翔んで埼玉は十分な出来映えだと評価します
以上、ご清覧ありがとうございました
ご意見・ご感想をいただければ幸いです